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物語 世界 3

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サルとボウシ屋

むかしむかし、冷たい北風の吹く山道を、ボウシ屋さんが歩いていました。

作ったばかりのボウシを、町へ売りに行く途中です。

「ああっ、寒いなあ。おまけに足もくたくただ。どこかに休める場所は?」

ボウシ屋さんはがけ下に、風も当たらず、お日さまの光でポカポカしている場所を見つけました。

「やれ、助かった」

ボウシ屋さんは、ボウシのつまった袋をかかえて日なたぼっこをしていましたが、そのうちにコックリ、コックリと居眠りをはじめました。

そしてしばらくして目を覚ましてみると、ボウシのつまった袋の口が開いていて、中に入れてあったボウシが一つ残らずなくなっているのです。

「しまった。盗まれたか!」

ボウシ屋さんがあたりを見回すと、頭の上の方から、

「ウキッ、 キッ、キッ」

と、サルの鳴き声が聞こえてきました。

「あっ、おれのボウシ!」

なんとがけの上でたくさんのサルたちが、ボウシ屋さんのボウシをかぶって遊んでいるではありませんか。

「おーい、ボウシを返せ! それは大切な商売の品だぞ!」

ボウシ屋さんは大声で怒鳴りますが、でもサルたちは知らん顔です。

「このイタズラザルどもめ!」

ボウシ屋さんはカンカンになって、

「早く返さないと、ひどい目にあわせるぞ!」

と、言いながらげんこつを振り上げました。

するとサルたちもまねをして、同じようにげんこつを振り上げました。

「バカにするな!」

ボウシ屋さんが地面をけってくやしがると、サルたちもまねをして地面をけります。

 その時、ボウシ屋さんは、よいアイデアを思いつきました。

 ボウシ屋さんはその場で逆立ちをすると、サルたちに言いました。

「やーい、バカサルども。このまねが出来るか?」

「ウキッ、 キッ、キッ」

バカにされて怒ったサルたちはボウシ屋さんに負けじと、がけの上で逆立ちをはじめました。

するとかぶっていたボウシが脱げて、がけ下のボウシ屋さんの前に、コロコロと転げ落ちます。

「しめしめ。うまくいった」

ボウシ屋さんはそれをひろい集めて袋につめ込むと、くやしがるサルたちをしりめに町の方へ歩いていきました。

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