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子供 テイルズ 7

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カンチール 森のかしら

むかしむかし、ゾウとトラがジャングルを歩いていると、メガネザルが上の方で、

「キーッ、キキーッ!」

と、さわいでいました。

「うるさいな、あのメガネザル」

ゾウは大きな耳をパタパタさせると、トラに言いました。

「あいつをどなりつけて、木から落としてやろう?」

「きみに、そんな事が出来るの?」

「出来るとも!    よし、じゃあ、もしぼくの声であいつが木から落ちたら、きみはぼくの家来になるんだ。そしてきみの声であいつが落ちたら、ぼくはきみの家来になってやる」

「それはおもしろい。じゃあ、ゾウくんから先にどなってみたまえ」

「よし、見ていろよ」

ゾウは大きく息を吸い込むと、木の方へむかって、

「パォーン! パォーン!」

と、さけびました。

「ウキィー!」

メガネザルはビックリしましたが、木をピョンピョンと飛びまわるだけで落ちはきませんでした。

「おかしいな? じゃあ、今度はトラくんがやってみたまえ。もしあいつが落ちたら、約束通りぼくはきみの家来になるよ。でも、ちゃんと地面に落ちないとだめだよ」

「ああ、まかせておけ」

トラはメガネザルをにらみつけると、今にも飛びつくようなかっこうをしながら、

「ガオーッ! ガオーッ!」

と、どなりつけました。

するとこわくなったメガネザルはブルブルとふるえて、そのふるえで手がすべってつかまっていた枝からストーンとトラの前へ落ちてきました。

トラはゾウの方を向いて、うれしそうに言いました。「さあこれで、きみがぼくの家来になる事に決まったね」

「・・・ああっ、そうだね」

ゾウはがっかりしながら家に帰ると、その事をお父さんに話しました。

「そうか、それはこまった事になったなあ」

ゾウのお父さんは、フーーッと鼻で大きなためいきをついて言いました。

「ゾウがトラの家来になったら、トラはいばってこの森の親分になるだろう。トラはらんぼう者だから、きっと弱い者をいじめてみんなをこまらせるだろう」

次の日、ゾウがトラの家来になったとのうわさを聞いて、カンチールという小さなシカがゾウのところへやってきました。「ゾウさん、きみがトラの家来になったって、本当かい? こまるな、そんな事になったら、トラがいばって森の親分になってしまうよ」

「そうなんだ、カンチールさん。きみは頭が良いから、なにか知恵を出しておくれよ」

「うーん・・・」

しばらく考えたカンチールは、名案を思いついてゾウに言いました。

「よし、それじゃあ、すぐにシュロ(→ヤシ科シュロ属の常緑高木の総称)の木のミツを持ってきてよ」

「わかった」

ゾウは家を飛び出すと、シュロのミツが入ったツボを持ってきました。

「ではゾウさん、それをきみの背中にぬるんだ。よこっぱらや足からポタポタとたれるくらいにね」

ゾウが言われた通りにすると、カンチールはゾウの背中に飛び乗りました。

「ではゾウさん、ぼくを乗せたまま森中を歩くんだ。そしてぼくが背中のミツをなめたら、きみはわざと痛くてたまらないと言うように、大きな声で泣いたり、バタバタと苦しそうな動きをするんだよ」

ゾウとカンチールが森を歩いていると、むこうからトラがやってきました。

「やあ、ぼくの家来よ・・・?」

トラはゾウに声をかけようとして、ゾウのようすがおかしいのに気づきました。

「ゾウのやつ、どうしたんだ? 背中に何かがいるようだが」

トラがようすを見ていると、カンチールがゾウの背中をペロリとなめました。

するとゾウは大きな声で泣いたり、苦しそうに足をバタバタさせています。

ゾウの背中にいるカンチールが、大きな声で言いました。

「こんなゾウくらいじゃあ、物足りないな。トラでも食べれば、腹もふくれるだろうが」 

それを聞いて、トラはビックリです。

(なんてやつだ! あんなやつにつかまったら、大変だ!)

トラはカンチールに見つからないように回れ右をすると、急いで逃げ出しました。

トラはとちゅうで、クロザルに出会いました。

「やあ、トラさん。そんなにあわてて、どこへ行くのですか?」

「うん、それがいま、こわいやつに出会ったんだ。そいつは大きなゾウをつかまえて、食べようとしていたんだ。そればかりか、そいつはぼくも食べたがっていたんだ」

トラが言うと、クロザルは笑いながら言いました。

「なんだ。それはきっと、シカのカンチールですよ」

「いや、シカだったら、ぼくを食べるなんて言うわけないだろう」

「じゃあ、いっしょに行きましょうか?」

「ああ、たのむよ」

そこで二匹は、ゾウを探しに行きました。

すると二匹の姿を見つけたカンチールが、ゾウの背中から言いました。

「やあ、クロザルくん。約束通り、ぼくの食べ物を連れて来てくれたんだね。よく太ったトラで、おいしそうだ」

それを聞いたトラはびっくりして、そのまま森から逃げていきました。

こうして森にはトラがいなくなり、みんなは安心して暮らす事が出来たのです。

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